ネットワークは、ボックス内でUSB3.0-LAN変換アダプターを使用して接続し、ボックス外に出るためのUSB端子に接続します。ただし、ボックスのUSB端子はUSB2.0のため、性能は480Mbps内に制限されます。ボックス外で、Raspberry Pi 4で作ったネットワークブリッジにUSB接続し、LANに接続可能としています。iperf3での実測は200Mbps程度でしたが、ログインしたりテストに必要なパッケージを取得する程度ならなど十分でしょう。もしGbEのテストをするときは、ボックス内にPi4などを追加で投入してテストすれば対応可能です。
ボックスのもう一つのUSB端子には、Rspberry Pi Debug Probeを接続しています。これを用いることで、OS起動前の情報が取得できますし、OS起動後もシリアル通信でログインして操作することが可能です。
まずは小さいヒートシンクだけでSDカード起動してみる
いままでのRaspberry Piなら許された、適当な小さいヒートシンクと、MicroSDカード(Samsung EVO Plus 64GB)の組み合わせで起動してみます。シールドボックスの様子はこちら(Debug Probeが光っていますが、これは端末からの給電のためで、Raspberry Pi 5にはまだ通電していません)。
Raspberry Pi 5内の各デバイスの初期化に関するメッセージや、ブートデバイスを探して起動しようとするメッセージが見られます。そして最後の「Selecting USB low current limit」が、5V/5A電源を検出できず、USBポートの供給は600mAまでとして起動しますよ、というメッセージですね。
起動中にワットモニターが表示した消費電力は、3〜6Wの範囲でした。
このあとのシリアルの出力はOSに変わり、少しするとOSのログインプロンプトが出力されます。
NOTICE: BL31: v2.6(release):v2.6-239-g2a9ede0bd
NOTICE: BL31: Built : 14:26:57, Jun 22 2023
[ 0.902716] spi-bcm2835 107d004000.spi: no tx-dma configuration found - not using dma mode
Debian GNU/Linux 12 pios5 ttyAMA10
pios5 login:
USB SSDブートにするとどうなるか確かめます。NVMe SSDをUSBに変換するケースに入れたものをUSB3.0ポートに接続して起動します。M.2 HATが発売されたら、USB3.0ではなく直接PCI Expressで接続できるようになりますね。USBとPCIeでの速度の違いを確かめたりするのが楽しみです。
通電すると、シリアル通信で以下のメッセージが表示されました。
***
USB boot requires high current (5 volt 5 amp) power supply.
To disable this check set usb_max_current_enable=1 in config.txt
or press the power button to temporarily enable usb_max_current_enable
and continue booting.
See https://rptl.io/rpi5-power-supply-info for more information
***
Raspberry Pi 5のUnixBenchの結果は以下のとおりです。起動OSストレージはUSB SSDを使用してUSBからブートしています。なお、冷却についてはヒートシンクとファンを使用していますが、電波暗箱内に熱がこもってしまうため、冷却についてもう少ししっかり対応すれば結果が変化する可能性がある点についてはご了承ください。
USB3.0ポートは、Raspberry Pi 4ではVL805 USBハブチップによって帯域を共有したものでしたが、Raspbery Pi 5では、RP1チップによって2つのUSB3.0+USB2.0ポートが提供されるようになったため、どちらのUSB3.0ポートを使用しても性能を引き出すことが可能になりました。
***
USB boot requires high current (5 volt 5 amp) power supply.
To disable this check set usb_max_current_enable=1 in config.txt
or press the power button to temporarily enable usb_max_current_enable
and continue booting.
See https://rptl.io/rpi5-power-supply-info for more information
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一般的なUSB PD電源は5Vの場合3Aまでの出力のため、これをRaspberry Pi 5で使用すると、USBデバイスへの供給が600mAに制限されたり、電力が不足する可能性があります。よって、オフィシャルの電源も必要な機能性があります。ただ、PSEの取得問題が起こるので、これは悩ましい問題かもしれません。幸い(?)日本はRaspberry Pi 5のいわゆる技適取得で他国より発売が遅れるため、待っている間に先に利用できる国のユーザーがどう対処するかの知見を得ることができるでしょう……。
SoCには、Cortex-A76を採用したBroadComのBCM2712が搭載されました。Cortex-A76といえば2018年頃のコアですが、MacBook2015やIntelのSkylake世代に近い性能とされ、現在でも日常的な用途では不足がない性能をRaspberry Pi 5で使えるようになったことは大きな進化と言えます。
Raspberry Pi 1 Model B+以降微動だにしなかったCSI・DSIポートの配置が変更されました。CSIポートがあった位置に2つ並ぶ形で配置され、デュアルのCSI・DSI共通ポートとして利用できるようになりました。つまり、これまでCompute Moduleでしかできなかったデュアルカメラ・デュアルDSIディスプレイがRaspberry Pi 5で扱えるようになったことを意味します。
なお、ポート形状はCompute Module、Raspberry Pi Zeroと同じ小さいタイプのケーブルになります。CSIケーブルはZeroと同じものが利用できますが、DSIケーブルはCSIケーブルと配線が異る点に注意が必要です。今回のリリースに合わせてオフィシャルのケーブルアクセサリが発売されたため、利用の際にはケーブルの用意も検討すると良いでしょう。
LANポートが再び移動。USB3.0はより高速に。
LANポートが3B+以前と同様、HDMIポート側に移動しました。PoE用のピンも移動したため、過去に発売されたPoE HATとの互換性が失われています。こちらも、Raspberry Pi 5のPoE HATが今後発売される予定です。
USB3.0ポートの配置はRaspberry Pi 4と変わらず真ん中に2ポート配置されています。Raspberry PiではVL805 USBハブチップによる分配でしたが、今回は2つの独立したコントローラーから提供されているため、同時にUSB3.0の帯域を使うことが可能になりました。
独立したUARTポート
UARTポートがGPIOから独立して、HDMI0とHDMI1の間に配置されました。このポートはRaspberry Pi Debug Probeを接続して、115200 baud rateで使うことができます。また、OS起動前のDiagもここから取得できるようになりました。
「27W USB-C PD Power Supply」は、Power Deliveryに対応したRaspberry Pi 5向けの電源アダプターです。Raspberry Pi 5のUSBポートで電源供給できる合計容量はデフォルトでは600mAですが、USB PD電源を使用することで自動で1.6Aに増強されます。また、電源アダプターは9V3A、12V2.25A、15V1.8Aの出力にも対応します。
「Raspberry Pi 5 Case」は、新しい専用ケースです。可変速ファンを搭載しており、Raspberry Pi 5のファン専用コネクターに接続することで使用できます。カラーは赤・白の他に、グレーの販売も予定されています。
Raspberry Pi (tradong) Ltd.は3月9日、Raspberry Pi Global Shutter Cameraを発表しました。
Raspberry Pi Global Shutter Cameraは、Sony IMX296センサーを使用した1600万画素のグローバルシャッターカメラで、通常のローリングシャッターカメラと比較して、高速で動作する物体を歪みなく撮影するのに向いています。レンズはRaspberry Pi HQ Cameraと同じくCマウントおよびCSマウント(付属のC-CSアダプタで対応)の各レンズが利用可能です。
Raspberry Pi Global Shutter Cameraの価格は50ドルで、各認定リセーラーを通じて販売されます。日本ではKSY、スイッチサイエンスでそれぞれ販売が開始しています。
早速試していく前に、Camera Module 3を使用するには、最新のRaspberry Pi OS Bullseyeと、libcameraによるカメラ環境が必要な点に注意してください。
libcameraは、Raspberry Pi OS Bullseyeで利用が開始されて、旧来のraspistillやraspividコマンドなど(Legacy camera stackなどと呼ばれています)が置き換えられました。ただし、Picamera2 Pythonライブラリの提供が遅れたなどの理由により、旧来のコマンド等を使用するための方法が現在も提供されています。注意が必要なのは、この旧来のほうでは新しいカメラモジュールは利用できないということですね。
Camera Module 3リリース以前に構築されたRaspberry Pi OS Bullseye環境がある場合は、OSのアップグレードをしておきましょう。また、Picamera2 Pythonライブラリも合わせて触ってみたい場合には、以下のコマンドでインストールできます。